まほろば【現代編】
俺の気迫に押されたのか、一瞬息を飲むとイリネは小さく頷いた。

「でもよ、どうするつもりだ」

「そうだな……」

この空間では、人間の俺には陰陽の力を操る力がない。

そこではたと思い至ったことがあった。

「お前、剣を持ってるんじゃないのか?」

「ん?ああ、コレか?」

そう言いながら、地面に手を突っ込むと土の中から鈍く銀色に輝く剣が顔を出した。

それを無造作に放り投げる。

ガシャンと重々しい音を響かせて、剣が俺の前に転がってきた。

それを手に取ると、ずっしりとした重さが掌の上に伝わってくる。

「この剣はいったいなんなんだ?」

手にしただけでわかる、その剣の持つ危うい力。

少し気を抜けば、体中の力を吸い取られてしまいそうになる。
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