まほろば【現代編】
そして、俺の握り締めた剣がツクヨミの体を刺し貫いた。

その刹那。

ツクヨミの瞳から月の雫のような清らかな水滴が流れ落ちた。

ドン――

急激な気の流れを感じて弾き飛ばされるように地面に着地する。

泉の上には剣で貫かれたツクヨミだけが残った。

そのツクヨミは、今は巨大な闇の繭に包まれている。

だがそれも、徐々に小さくなり始め最後の一筋が剣の中へと吸い込まれていくと、力をなくしたようにそのまま泉の月の上へと落下していった。

それと同時に、俺たちが佇む地面にも異変が起きていた。

前にイリネが起こした地鳴りとは比べ物にならないほどの強烈な揺れに襲われ、立っていられなくなる。

収まるどころか、その揺れはさらに強さを増し、まるで洗濯機の中にでも放り込まれたかのような浮遊感を感じた瞬間、凄まじい重力に押しつぶされ、俺はそのまま意識を失った。
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