まほろば【現代編】
私の言葉に、これ以上ないって言うくらいの哀しみの色を瞳に湛えてこちらを見た。

「会わないほうが、いいと思う」

本能的に、その言葉を受け入れたほうがいいというのを感じた。

だけど、その本能に抗おうとする自分もいる。

「会わせてください」

もう一度、心を鎮めながらカグヤさんの瞳をしっかりと捉え、ゆっくりと言葉にした。

フイとカグヤさんの視線が外れた。

「ゴメン。それは私には荷が重過ぎる。もし、本当に会いたいのなら……」

そこで言葉を切ると、さらに哀しみを深めた瞳で私を見ると「自分で探して」と消え入りそうな声で告げた。

そして、逃げるように「じゃあ、私はもう行くね」という言葉を残して、食事の後片付けを手早くすませると部屋から出て行ってしまった。

別に、カグヤさんが悪いわけではない。

あんな顔をさせてしまって申し訳なく思いつつも、それゆえ、真人君に何かとんでもないことが起こっているという確信を抱くには十分だった。

「真人君……」

また、最後に真人君に会ったのときの光景が蘇る。

そして、揺れる気持ちのままぽっかりと口を開けている入り口をしばらく眺めることしか出来なかった。
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