まほろば【現代編】
少し改まった調子の俺の声に、全てを包み込んでしまうような穏やかな笑みを湛えたまま小さく首を傾げた。

「根の国に行く方法を教えてくれ」

「あぁ、そうでしたね。わかりました」

そう言いながら、ツクヨミは腰に差していた剣を引き抜いて、俺の目の前に差し出した。

その剣を受け取りながら、今度はこちらが首を傾げる。

「これが、どうした?」

「これは、元はスサノオのものなのです。名は、天叢雲剣(あまのむらくものつるぎ)、またの名を草薙剣(くさなぎのつるぎ)とも言います」

「草薙剣と言えば、三種の神器の一つじゃなかったか?」

「三種の神器?そうなのですか?本来なら、この剣はスサノオが姉上に献上したものなのですが、わけあって私が預かっていたのです」

「姉上?スサノオとツクヨミの姉……」

古事記によれば、それは天照大神(あまてらすおおみかみ)のはず。
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