まほろば【現代編】
まだ衝撃からは完全に抜け出てはいないが、それでも先に進まなくてはいけない。

「どうすれば、いいんだ?」

俺の問いかけに答える代わりに、ツクヨミはスッと立ち上がると、部屋の入り口まで進んで振り返った。

「お望みならば、ついてきてください」

そして、そのまま部屋から出て行ってしまった。

父さんに目配せすれば、無言で「行け」とでも言うように小さくだがしっかりと頷いた。

それに応えるように、俺も一つ頷くと急いでツクヨミの後を追った。

ツクヨミの歩みは淀みなく、目的の場所があらかじめわかっている歩き方だった。

そして、辿り着いたのは中臣家が長い年月をかけて護ってきた神社の境内だった。

つい数時間前までは、そこは魔の巣窟とでも言えるほどの禍々しい気に満たされていたのに、今はすっかり元の姿に戻っているように見える。

ツクヨミは、本殿の前まで来るとその横に立つ御神木を仰ぎ見るように顔を上げた。
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