まほろば【現代編】
それは、感覚ではなく実際に起こったことで、気づいたときには洞窟のような見渡す限り岩ばかりの場所に叩き落されていた。

とっさに受身を取って衝撃を和らげる。

それでも、地面とは違いどこもかしこも岩場という場所なので、多少の擦り傷は作ってしまった。

しかし、そんなことは大したことではない。

とりあえず、今の状況を把握するためにその場に立ってぐるりと辺りを見渡してみた。

落ちたところは、広場のようなところで、その広場を中心としていくつかの通路が放射線状に伸びている。

灯りは、等間隔に岩壁をくりぬいた場所に燭台が置かれており、その燭台に灯された蝋燭の炎のみだった。

それでも、そこそこの光量はあるので不便はない。

それにしても、この周辺には全く人の気配というものがしなかった。

剣に導かれるように降り立ったここは、本当に根の国なのだろうか?

そんな疑問も浮かんだが、考えていても仕方がない。
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