まほろば【現代編】
呆れたようなため息を吐きながら、それでもスサノオも構えを変えた。

手加減しないといいつつ、明らかに先程まで放っていた覇気を抑え、構えも片手で剣を持ったままの軽いものだ。

ジリッと一歩足を擦りだす。

スサノオは、ただじっとこちらを見ているだけで特に手を出してはこないようだった。

また一歩前に出る。

間合いは十分。

後は、打って出るだけ。

それは、わかっているが体が絡め取られたように動かない。

「いつまでそうしているつもりだ?オレとしては、早いところハルカを抱きたいんだがな」

挑発するような言葉と、相変わらず余裕綽々といった佇まいにまたしても頭に血が上る。

タンと地面を蹴って一気に相手の懐に飛び込むと切り上げるように腕を振り上げる。

完全に入ったと確信したにもかかわらず、刀は空を切った。

代わりに俺の顔の横を鋭い風が吹きぬけた。
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