まほろば【現代編】
敢えて致命傷は与えず、ただ小刻みに傷を負わせて、体力を徐々に奪うつもりなのだろう。

そんなやり取りをいったいどれくらい続けたのだろうか?

真っ白だった浄衣が今はその元の色がわからないほど紅く染まっている。

吐く息も短くなっているのをわかっているが、それでもまだ倒れるわけにはいかない。

スサノオは、傷一つ負うことなくただ悠然とこちらの出方に合わせて剣を振るっていた。

最初から適わない相手だということはわかっていたが、せめて一矢報いなくては終わることができない。

だが、どうしたものかさっきから目がかすんで仕方がない。

何度瞬きしても、スサノオの姿が二重に見えて距離感が掴めないでいた。

「どうした?もう終わりか?」

スサノオの声すらどこか遠くに聞こえて、その言葉の意味がすんなりと頭に入ってこない。

だが――

「まだだ」

本能でそう答える。
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