まほろば【現代編】

リュウii

体から体温が奪われていくのと同時に意識がどんどん失われていくのを感じていた。

それがある瞬間、何ともいえない心地良い温もりに包まれた。

俺は、この暖かさを知っている。

ずっと長いこと求め続けていたものだ。

そう、ずっとずっと気が遠くなるほどずっと。

ゆっくりと重い瞼を持ち上げてみた。

何か柔らかいものが覆いかぶさっている。

唇が触れそうなほど近いところに、可愛らしい耳たぶが見えた。

知らず知らずのうちに頬は綻び、彼女の名を呼んでいた。

「……ハルカ」

視界が開けたかと思うと、心配そうに覗き込んでくる愛しい少女の顔が目に入ってくる。

その少女は、清らかな青い光を纏い、いつもよりもどこかしら雅やかな雰囲気がある。

「ハルカ」

もう一度、少しでも安心させるように大切に名前を紡いだ。
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