まほろば【現代編】
そして、その存在を確かめるように上気した頬に触れる。

「リュウ……」

今にも泣き出しそうに少し顔を歪めるから、どうにか笑顔になって欲しいって思ってしまう。

「ハルカ、大丈夫か?」

そう問いかけた俺の言葉に、可愛い唇を少し尖らせて文句を言われてしまった。

笑顔が見たかったのにな。

そんなことを考えていたら、何かに呼ばれたような気がした。

耳に届いたわけではない。

無意識で手が動いている。

ハルカが何か焦っているみたいだったが、そんなことよりも……。

「ハルカ、何を持ってる?」

そう、ハルカのここから何かが俺に呼びかけている。

「ここにあるのは、何だ?」

俺の触れている場所に、ハルカもそっと手を重ねると体の中を何かが駆け抜けるような衝撃を感じた。
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