まほろば【現代編】
「何を……」

「言ったであろう?オレは長い年月、共に歩んでいける者を探していたと。ハルカには、その素質がある」

「だからといって、渡すわけにはいかない」

「それは、わかっておる。だがな、オレもこの短い期間でこんなにもこの頼りない娘に心惹かれるとは思ってなかったからな。それは、予想外だった」

本当に愛しいものに接するように、ハルカに触れるスサノオの手を無理やり振り払うことは出来なかった。

「ハルカ、幸せになるんだぞ」

最後にそう呟くと、自らの思いを吹っ切るように勢い良く立ち上がり、俺と真人を見据えると厳かな声で告げた。

「さあ、もうここでの用は済んだであろう?だったら、とっとと地上へ戻るがいい」

「えっ?」

有無を言わせない威厳に満ちた態度に、俺も真人も言葉をなくした。

「真人」

その威厳を保ったまま、スサノオの視線が真人を捕らえる。
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