まほろば【現代編】
「ハルカ」

リュウの声に振り返る。

「今、何をしたんだ?」

「わからない。だけど、多分彼女が望んだことを、私が手助けしてあげられたんだと思う」

「そっか……」

リュウは、それ以上何も聞いてはこなかった。

真人君たちも、ただ感慨深げにミツハさんの残像でも見るように、しばらくその場に立ち尽くしたままだった。

しばらくすると、真人君たちは改めて私に礼を言うと、カグヤさんが真人君の手をひくように戻っていった。

その後姿は、とても微笑ましくて、きっと真人君にはカグヤさんがいるから大丈夫だと思わせてくれるのに十分だった。

「私も、帰らなくちゃ……」

そう口に出したとたん、何か大事なことを忘れていることに気が付いた。

そして、サーッと血の気が引いていくのがわかる。

「どうした?」
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