まほろば【現代編】
「ホムラ」

上空で羽ばたき続ける紅の鳥に声をかける。

しかし、混乱しているのか私に対して威嚇するかのように大きく羽を広げた。

その紅い瞳には怯えにも似た色が伺える。どうやら、自分の突然の変化に戸惑っているみたいだった。

「ホムラ」

優しく宥めるように声をかけながら、また一歩一歩近づいていく。

ホムラの警戒態勢は解かれていない。

私が近づくごとに、その全身の毛が猫のように逆立っていくのがわかった。

ホムラは、私のことを忘れてしまったのだろうか? 

そんな不安もあったが、そうだったらまた一から関係を築けばいい。

今はとにかく、ホムラに触れたかった。

そうしなければいけない気がしていた。
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