まほろば【現代編】
「そんな一時しのぎの慰めなどいらん。とっとと帰れ」

「そういうわけには行きません。スサノオ様――」

そこで顔を上げた女性の額がポッと青白く光った。

「いいえ、旦那様。私をお忘れですか?」

先ほどまでの女性と雰囲気が一変していた。

その様子に、男も息を飲む。

「お主、まさか……」

「旦那様は、輪廻転生というものを信じますか?」

どこか悪戯っぽく笑いながら女性が口にする言葉に、ますます男の顔は驚愕の色を濃くする。

「クシナダヒメか……」

「はい。一度は、旦那様の元を離れた身ですが、離れてみてやっと自分の気持ちに気が付きました」

「……」

「旦那様を、お慕いしております。どうか、未来永劫、旦那様の御側にいさせてください」

男は、スッと立ち上がると女性のすぐ横で同じように膝をついた。

「よく、戻ってきてくれた」

男は少し震える声でそういうと、優しく女性を抱きしめた。

「旦那様……」

女性も、男の存在を確かめるようにその背中に手を回し、抱きしめた。

それまで、薄暗かったこの空間に花が咲くようにポッ、ポッと光が満ちていく。

その光に祝福されるように、二人はいつまでも抱きしめあっていた。
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