まほろば【現代編】
あと一歩で手が届く、というときにホムラの緊張の糸が切れたのか嘴を大きく広げてその口から炎の塊が吐き出されて私に向かってきた。

私は飛び上がるとその炎ごとホムラを抱きしめた。

炎に包まれたホムラの体は思いのほか柔らかく、全く熱を感じることがなかった。

しばらく、ホムラを抱きしめたままその胸に顔をうずめていた。

どのくらいたったころか、手足にひんやりとした感触がした。顔を上げてみるとこの空き地一帯だけ、雨のようなものが降り注いでいた。

ただ、雨というにはあまりにも優しくて不快感など全くない。

気づけば、空き地の火は完全に消えており私が抱きしめていた大きな鳥の体の炎も小さくなり、それに伴って体も縮みだしてた。

やっと元のホムラに戻ってくれる。

小さくなりつつある体を抱きしめながらそう思っていたけど、その私の予想は裏切られることになった。

私は今、小学校高学年ぐらいの男の子を抱きしめている形になっている。
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