まほろば【現代編】
この間……。おぼろげな記憶が蘇る。

そういえば、夏休みに入ったらすぐに出発するって言っていた。

それにしても、すぐって本当にすぐだったんだ。

でも、夏休み初日から行くことないのに。肩を落とす私を見て、いつの間にか食べ終わったアイスの棒を歯で噛んで上下させながらホムラが私の顔を覗き込む。

「ねぇ、ハルカ。せっかくだから上がっていけば?」

まるで自分の家ででもあるかのようにホムラは中臣家に馴染んでいた。

勢い込んでここまできたのに肩透かしを食らって、いきなり疲れがドッと出た感じがする。

だから、お言葉に甘えて上がらせてもらうことにした。

いつものように、リュウの部屋に向かおうとした私の襟首をホムラに掴まれた。
< 95 / 702 >

この作品をシェア

pagetop