別れ道での約束
「さようなら」


振り向かないで、大智の部屋を出た。


「咲良、愛して…る」


ドアを閉める時に切ない声が聞こえた。


その声には答えなかった。

振り向かない。振り向いて、顔を見てしまうと、戻りたくなってしまうから。


ポケットに入れたリングを握りしめる。


捨てようかとも思ったけど、そのまま家まで持って帰ることにした。


私たちが幸せに過ごした証しだから。


夢を叶えた時に会えるかは分からないけど、会いたいと思った。

その時、気持ちが変わらなかったら、リングを着けて会いに行こう…。


< 239 / 261 >

この作品をシェア

pagetop