For 10 years
「あっ!」



ふんわりした絢華ちゃんの雰囲気が、一気に慌てた表情に変わる。



「な、なに!?」


「彼氏が待ってるんだった。もう行きますね」



それでもやっぱり……


彼氏を想ってやさしい表情になる。


二人でいる姿は見たくないはずなのに……


絢華ちゃんが彼氏を想っている時のあの笑顔見たさに、つい……



「俺も外に出るよ」



と、一緒に裏口から出ることを選択してしまった。


でも……


やっぱり見なきゃよかったと、後悔することになった。


絢華ちゃんは彼氏を見つけるなり、その場所へ駆け出そうとしたけれど……



「絢華ちゃん、じゃまた」



と俺が声をかけると……



「あ、はい、また。お疲れさまでした」



絢華ちゃんはそう言って頭を下げてから、今度こそ彼氏のもとへ走っていった。
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