For 10 years
あのときの俺は30才になったばかりだった。


だからもちろん人前で泣くなんて、そんなカッコ悪ぃことはしなかったけど……


でも、止められなかった。


だって、絢華ちゃんを想い始めて10年だぞ。


俺の人生の3分の1の時間だ。


やっぱり10年って、長い。


リナちゃんの涙を見ながら、そんなことを考えていた。




それから、リナちゃんとは連絡を取り合うようになった。


そして数週間が経った頃から、俺が絢華ちゃんを吹っ切ったことを知ってか、リナちゃんは俺に対して猛アタックし始めた。


会う度に『好き』と言われたり、『付き合って』と言われたり。


あの頃はウザく感じた言動や行動が、この頃はなぜか凄く心地よくて。


何も言われない日は、逆に寂しく感じるようになってきた。
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