For 10 years
絢華ちゃんと出会って五年……


こんな姿は初めて見る。


いつも明るくて、いつも笑顔で……


そんな絢華ちゃんに、俺はいつも癒されていた。



「ご本人かどうか、確認していただけますか?」


「……」



ずっと黙っていた絢華ちゃんが、意を決したように蒼太くんの手を引きながら……


優太くんの前まで、ゆっくりと足を進める。


警察官が、顔に掛けられている白い布を取った――…


その瞬間――



「…っ!………ぁ……ぃゃ…」



絢華ちゃんが体を震わせた。


そして……



「…ゆ……ぅた………いやあぁぁぁぁぁッ……」



そう叫びながら、目の前の優太くんにしがみついて泣き喚いた。


それからも絢華ちゃんは何度も優太くんの名前を呼んで、何度も体を揺する。


でも……


優太くんから答えは返ってこないし、体は微動だにしない。
< 28 / 119 >

この作品をシェア

pagetop