For 10 years
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優太くんと一緒にアパートへ帰るという絢華ちゃんに



「俺も一緒にいていいか?隣の部屋にいるから。……絢華ちゃんのことが、心配なんだ」



絢華ちゃんは、泣き腫らした目からいまだ止まらない涙を流しながら、コクンと頷いた。


隣の部屋にいても、絢華ちゃんが優太くんに話し掛けている声や泣き声、嗚咽が聞こえてくる。


俺は床にあぐらをかいて座りながら、これからどうすべきなのか、俺に何ができるのか、ひたすら考えていた。



ピンポーン…



日付も変わっている真夜中に鳴り響いたインターホン。


絢華ちゃんが誰かに連絡したのか?


玄関まで足を運び鍵を開ける。


そして、ドアを開けると……



「俺、優太の親友で瀬戸って言います。須藤ちゃんから連絡もらって……」



須藤ちゃん?


ああ、絢華ちゃんか。


彼に中に入るよう促して、絢華ちゃんに声をかけた。



「絢華ちゃん、……優太くんの友達が」



俺が言い終える前に、彼が絢華ちゃんの姿を視界にとらえたらしく……



「須藤ちゃん!」


「太一さんッ、優太がっ……」



絢華ちゃんは彼に走り寄って腕をつかんだ。
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