For 10 years
二人一緒に、優太くんが寝ている場所へ足を運んだ。


彼は、そのまま優太くんの傍へ行って……



「……にやってんだよッ!優太っ……っ」



そう言って、両手で顔を覆いながら涙を流した。



しばらくして……


目を真っ赤に染めた彼が顔を上げて、



「須藤ちゃん、大丈夫?」


「えっ」


「蒼太も」


「蒼、太は、……優太は、寝てるって、……そう思ってる。……あたしだってっ……そう、……思い、たいっ」



絢華ちゃんの目から、また大粒の涙が滝のように溢れてきた。



「須藤ちゃん……っ」



彼が絢華ちゃんをぎゅっと抱き締めた。


二人で涙を流してるのを見ながら……


彼は、俺がしたくてもできないことを……、聞きたくても聞けないことを……、さらっとやってのけた。


病院からここへ来てからずっと、これからは俺が支えてやりてぇって、守ってやりてぇって……


そう思っていたんだ。


それなのに……


見てるだけで何もできねぇ自分が……、何も言えねぇ自分が……


もどかしくて。


なんつー情けねぇ男なんだって、呆れずにいられなかった。
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