For 10 years
そして、退院の日。


この日はたまたま俺が行く日だった。


絢華ちゃんと赤ちゃんを車に乗せて、エンジンをかける。


その瞬間、絢華ちゃんが口を開いた。



「隼人さん、寄っていきたいところがあるんだけど」


「いいよ、どこ?」


「出生届を出したいから、役所へ寄ってもらいたいの」


「了解。……名前、決めたんだ?」


「うん」


「なんて名前?」


「ゆうか。……優太の“優”と絢華の“華”で、優華」


「そっか、……いい名前だな」


「うん」



絢華ちゃんらしいと思った。


ほんとに純粋に、真っ直ぐに優太くんのことを愛してるんだと思った。



そのまま役所へ寄って、出生届を提出してきた。
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