For 10 years
アパートに着いて部屋に入った。


絢華ちゃんはまず先に、優太くんの遺影の前で手を合わせる。


その表情は、愛する人を見つめる……そんな表情。


でもふとした瞬間に、泣きそうなものに変わる。


そして伏せていた目をあげて



「ほら、蒼太も優華もパパに浴衣見せて“ただいま”しなさい」


「「はぁーい!」」



二人は優太くんの遺影の前で浴衣を見せ、手を合わせて「パパ、ただいまー」って言った。


その姿を見て笑みをこぼす絢華ちゃんが、どうしようもなく愛しく感じた。


でもやっぱり泣きそうな表情に変わった絢華ちゃんは、それを隠すようにお風呂の準備をしに行った。
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