For 10 years
だけど……


譲れないこともある。



「絢華ちゃん、……たまにさ、蒼太や優華と遊んだりしてもいいか?」


「えっ」


「なんつーんだろ、優華は特にさ、生まれてからずっと見てきて……、図々しいんだけど、自分の子みたいな?そんくらい可愛くてさ」



俺がそう言ったとたん、絢華ちゃんが顔を歪めた。



「絢華ちゃん?」


「きっと、……蒼太も優華も、喜ぶ……」



そう言った絢華ちゃんの目から……涙がこぼれた。



「絢華ちゃん?どうした?」


「あたし、……母親として、最低なことをした。あの子達の気持ちも考えないで」



そう言ってぽろぽろと涙をこぼす絢華ちゃんを見て、昨日から元気がなかった原因が、ここにあるんだと悟った。



「何があった?俺で良かったら聞くよ」


「でも……」



絢華ちゃんはきっと、俺を頼っちゃいけないって思っているんだ。
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