For 10 years
「絢華ちゃん、……俺のことは考えなくていいよ」


「えっ」


「ほんとは蒼太や優華のためには、ゆっくり離れていきたかったんじゃねぇの?傷付くって言ってるけど、それ、俺のためなんだろ?」


「……」



絢華ちゃんは口を閉ざした。


きっと当たっていたんだろう。



「絢華ちゃんは蒼太と優華のことを一番に考えてやれよ。俺は簡単に傷付いたりしねぇよ。そんなにやわじゃねぇから」



そうだ。


俺はそんなにやわじゃねぇ。


確かに、絢華ちゃんが他の男といるのを見るのは辛いと思う。


でも……


俺は絢華ちゃんの気持ちを大切にしてやりたい。


この三年、泣きながらだけど、真っ直ぐ前を見て子供達を育ててきた、そんな絢華ちゃんの幸せを祈ってやりたい。
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