初恋メランコリック



「じゃあ、やってみる?」





「いやいや葵さん、じゃあじゃないですよ!?ていうかいきなり話飛んじゃってるんですけど。」







何がどうしてそうなったのかわからないけど、葵はいつも通りの無表情でイスからおりてあたしに近づく


すっと伸びてきた葵の細い腕
日焼けの一つもした事のないような白い腕
あぁ、うらやましいなこの野郎。


あたしなんか日焼け止め使っても、毎年夏には真っ黒なのに



そんなくだらない事を考えながら、葵の腕にあたしは思わず後ずさる


だけど葵は止まらない






「なんで逃げてるの?」





「いや、あたしの本能が逃げろと告げているのだ。」





「バカな事言わないで。」





「別にふざけてるわけじゃ…」






そう言おうとしたが、あっさりと葵に捕まり口を塞がれた

口元には、葵の細長い人差し指が



あたしはその反動で、黙り込んだ

室内は一気に静けさが戻り、ただ聞こえるのは凛と光輝くんの寝息だけ







「ちょ、葵近いって!!もう少し離れよう!」





「なんで?やるんでしょ?ちゅー。」





「え、あたしそんな事一言も言ってないよね?なんかちょっと変だよ、葵。」





「…俺はいたって普通だけど?」






近い。

葵との距離が、近い



背中には冷たい壁で後ずさる事も許されないらしい
あたしはとうとう座り込んでしまった


それと同時にしゃがみ込む葵の姿




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