あまのがわ

１

「あんたどうしたの？何があったの。」

そんな昼下がり、ゆったりとした空とは真反対のせかせかした声が聞こえてきた。
もう聞き慣れっこだが、いわゆる　女友達の恋愛相談を受ける女の声　だった。
よく見受けられる。

「彼とまた喧嘩したの。だって、彼が悪いの！女の子の話ばっかりするから！」

まだ何も言っていないのに、言い訳を並べつつ白状する。
私には全く関係なければ興味もないのだが、一週間遅れの提出物の答え写しをしている私の耳にはどうしても届いてしまうのだ。
きっとそこらでゲームに夢中な男の子たちには、耳の寸前あたりで彼女らの声は止まっているのだろうが。


「あんたらなんだっけ？プチブロで知り合ったんだっけ？」

「うん。だってプリクラがイケメンだったの。あと、メールですごく優しいのよ。」

私は思わず吹きそうになった。
まさか、あんなにも真剣な話に出てくる男は、ネットで知り合った男だったなんて。
良かったわね、聞こえてたのが私だけで、という気持ちさえ起こった。
いや、もしかしたらあそこでお弁当を食べている大人しい子にも聞こえていたかもよ。

あまりの動揺に、私のペンを動かす手はすっかり止まってしまった。
そして深く考えたのだ。


ネットで出会い？ありえない。