鬱（うつ）病という名の長きトンネル
その通りだった。

洋子は何でも自分ひとりで解決する。

人に相談したりだとか、誰かを頼るということをしない。

女性としては、格好良く見えるかもしれない。

結婚前、付き合っていた時の彼女は、いつも凛としていて、
それまで付き合ったことのないタイプの姿に、俺もかっこいいと感じたものだった。

しかし結婚してからは、徐々にそのイメージが変わっていった。

自分にも厳しい人だが、他人にも厳しい。

夫である俺に対しても頼ることをしない。

「自分は自分」と冷たく割り切る姿は、理想としていた夫婦像とかけ離れていて、苛立ちを感じることも多々あった。

たしかに夫婦といえども他人。

他人同士がひとつ屋根の下で暮らすのだから、どちらかが歩み寄らなければならない。

しかし彼女は一切歩み寄らない。

互いの意見が食い違っても、決して引くようなことはしなかった。

そのまっすぐな性格の、良い面と悪い面の両方を知ったのは、結婚してしばらく経ってからのことだった。
< 10 / 11 >
表紙・目次

この作品をシェア

pagetop