鬱(うつ)病という名の長きトンネル
洋子は缶のチューハイを片手に、うなだれていた。


「まさか診断名がつくとは思いもよらなかった・・・。
診断名がショックというより、
あたし自身はストレスに強いと思っていたから
そっちの方がショックだわ」


事の発端は不眠だった。

不眠の相談だけのはずが、予想外の診断結果。

洋子は黙りこんだまま、ぐいっと缶を傾けた。

状況は最悪だが、こんな状態でも飲むことは忘れないんだ、と思ったら内心可笑しくてしょうがなかった。


「あたしね、これまで困ったことがあっても
全部自分で解決できるという自信があったの。
誰にも頼らずに生きていける自信。
でもね、ドクターはこう言うの。
『なんでもあなたは抱え込みすぎ。
もっと気楽に他人に打ち解けられるようになれるといいね』
だって」

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