人貸し屋 外伝



肩を濡らす温かい何か

それが涙と言うことに気付くのには

時間はかからなかった



「・・・なぜ、泣いているのです」



「・・・泣いてねえよ。酒だ」



「溢れるくらい飲まないでください

 体に悪いですよ?」



「・・・っ、うる、せえよ」



徐々に腕に力が入っている

私は小さく笑みをこぼした



「・・・だから言いたくなかったのです

 誰にも言わず、1人で死にたかった」



「・・・そんなの、アイツらが

 許すわけねえだろうが」



アイツらというのは・・・

たぶん、昼と夜のことだろう



「・・・なら、なおさらです。

 この瓶を持ってきて正解でした」



そういって袖から

普段より少し大きな瓶を取り出す



「・・・なんだよそれ」



私から離れたドクターが

瓶を受け取る



< 107 / 127 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop