人貸し屋 外伝
悲しそうに、そう聞く夜
「・・・そうですね。
好きだから、そう言いました」
顔色を変えずにそう言う
すると夜は足早に歩きだした
「待ってください。
何を怒っているんです?」
「・・・怒ってない」
不機嫌な声でそう言う夜
私は着物で追いつくように小走りした
「ドクターが好きって、本当か?
まだ、《アイツ》のことが・・・
好きなんだろ?」
アイツ・・・
夜が言っている人を
思い出す
「・・・誰のことですか?
私が好きになった人など
今までにいませんでしたが」
「・・・・・・・・・・・・」
何も言わない夜と歩く中で
私は《あの方》のことを
思い出していた