若き店主と囚われの薔薇
「…………」
…クエイト様が、手紙の送り主?
エルガの、今回の客……?
考えれば考えるほど、混乱していく。
確かに、宝石が好きな方だった。
宝石商であるエルガと知り合いだとしても、不思議ではないと思う。
けれど、どうして。
どうしてよりによって。
私がこの奴隷屋にいるときに、あなたはここへ来てしまったの。
エルガは、知っていたはずだ。
手紙の送り主が本当にクエイトだったのならば、今夜、彼がここへ来ることも。
………この五日間、ずっと、ずっと。
知っていた、はずなのに。
「…ああ、そういえば」
耐えきれなくなって、私が静かにその場でうずくまったとき、クエイトの声が聞こえた。
「あの娘は今、どうしていますか?」
その言葉に、目を見開く。
少しの間の沈黙の後、エルガが返事をした。