若き店主と囚われの薔薇
「…黙っていたことは、謝る。すまない」
頭を下げると、ロジンカはさらに強く唇を噛んだ。
そしてまた、悔しそうに涙をボタボタとこぼす。
「…あなたに謝られたって、もう、どうしようもないのよ…!私は、知ってしまった。彼が、私のことを、どう思っていたか」
それは。
…クエイトの、嘘だ。
彼は本当に、あんなことを思っていたわけではないだろう。
あの表情を見ていれば、わかる。
けれど何も知らない俺が、言えることでもなかった。
『これで、よかったんだ。あの子は、これで…私から、解放されただろう』
…きっとクエイトなりに、意図して言ったことだったのだろう。
最も、あれを実際にロジンカが聞いてしまうとは、予想もしていなかっただろうが。
「…ロジンカ。少し、落ち着け。テントへ戻った方がいい」
「嫌よ。今更戻って、どうするの?私にはもう、生きてる意味なんてないのに!」
…わかっている。
彼女が今、生きる意味を失ってしまったことは。
俺にも、わかっている。…けれど。