若き店主と囚われの薔薇



『…薔薇、みたいだな』



つぶやいた言葉に、反応したのは赤い瞳だけだった。

その宝石のような美しい赤が、僕を驚いたように見ている。

そして、口元の赤が開かれた。



『…そんなこと、初めて言われたわ』



…鈴の音のような、優しい声だった。

奴隷商が、あまりに驚いているのか、口をぱくぱくとさせている。


『…ほう。喋れるじゃないか』

笑いを含んだ声が、後ろから聞こえる。

けれど、僕は構わなかった。

自分の目に映る、この少女の全ての赤がその瞬間、くっきりと焼き付いた。

僕を見つめる、その瞳が。

仄かに、嬉しそうに色づいている。


僕の、たった一言で。



『…君は、綺麗だね』

自然と、口からこぼれた言葉。

まるで幼い子供の口説き文句のようだと、我ながら思った。



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