若き店主と囚われの薔薇
それでも、少女は素直に目を開いて。
何度も、瞬きをする。
自分の目の前にいる、僕という男の存在を確かめるように。
サラ、と赤髪が揺れた。
『ほんとう、に…?』
身を乗り出して、僕だけを見つめてくる。
『綺麗』と言われたことがよほど驚きだったのか、少女はしばらくの間僕を見ていた。
カシャン、と、彼女の足につけられた枷が音を立てる。
『ああ、すみません、ビストール様。しつけがなっておらず、まさか話すとは思わず、無礼にも…』
『…いや、構わない』
無礼だなんて、とんでもない。
僕はもっと、この少女がしゃべるのを見ていたい。
この赤髪が、もっと生き生きと動くのを見てみたい。
『……私が』
気づけば僕は、少女に向かって口を開いていた。
『君に、名前をあげようか?』
ふさわしい名前を、僕は知っている。
赤い瞳が、これ以上ないほど見開かれた。