若き店主と囚われの薔薇
もしこの先も、生きていくとしたら。
エルガの店で、今のような生活を続けるのだろうか。
奴隷として、見知らぬ誰かに買われる恐怖に、怯えながら。
…そんな風にして、私は生きていくのだろうか。
「死ぬのは、死ぬという選択肢しか残されていないときでいい。今、お前の目の前には、もっとたくさんの選択肢が広がっているんだ。…一度くらい寄り道しても、構わないと思うがな」
どのみち、人は皆死ぬのだから、とエルガは言う。
寄り道。
どうせ、最後は死ぬのならば。
…もう少しばかり生きてみても、いいのではないか。
「名前を、やろうか」
その言葉にハッとして横を向くと、エルガがまっすぐにこちらを見ていた。
「…え?」
「自分が今何者なのか、わからないのが不安なら、俺が新しい名前をやる、と言ってるんだ」
…新しい、名前。
それは、ロジンカではなくなる、ということで。