若き店主と囚われの薔薇
「虚構と建前ばかりの社交界に疲れていた僕は、この子の素直な反応が、とても好きでした。僕の言葉に耳を傾け、いつも嬉しそうにしてくれる…ロジンカは、僕の支えだった」
…この少女は、いつもまっすぐだ。
知りたいことがあれば、遠慮なく聞いてくる。
間違っていると思えば、真っ向から反論してくる。
悲しければ泣き、嬉しければ笑う。
彼女の言葉は、全てが真実だった。
クエイトが、ロジンカを確かに愛していたことは、俺でもわかった。
ならば何故、手放したのか。
クエイトは目を伏せ、「僕が」と言う。
その声はとても低く、苦しげで。
子供達…特にテンは、クエイトの話を、曇りない瞳で聞いていた。
「僕が、弱かったから。この子を、ここへ置いて行くことになってしまった」
…ロジンカと、クエイト。
奴隷と、主人だったもの達。
かつて愛してあって生きていた、ふたりの男女の話。