若き店主と囚われの薔薇


「僕が、若い娘を自室に住まわせているという事は、ロジンカが僕のところへ来て一年が経つ頃には、周知の事実となっていました」

「…………」

「僕が、彼女を奴隷として扱えたらよかったのですがね。…あまりに、大事にしすぎた。他の者からは、『当主は赤髪の愛人に心酔している』とまで、言われてしまいました」


…それが、彼にとってどれほど重荷であったかは、考えるまでもなかった。

養子として家に入り、家督を継いだクエイト。

ただでさえ味方はおらず、風当たりも強い中で。

家督を継いだばかりの彼が、奴隷として買った若い娘を大事にしている、というのは、周囲からどう見えただろうか。


クエイトは自嘲するように、乾いた笑みを浮かべた。


「僕は、ロジンカを愛しすぎた。愛するあまり、周りが見えなくなっていた…周囲の評価が下がっていくのも感じて、怖くなったんです。このまま、彼女をそばにおいておくことに」


…奴隷を、愛してはいけない。

心を、奪われてはいけない。


それは、奴隷を好む貴族の男の間で、よく囁かれていることだった。

奴隷への度の過ぎた愛情は、身を滅ぼし、家を滅ぼすと言われる。

…クエイトは、それを恐れたのだ。



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