若き店主と囚われの薔薇


「ロジンカを買ってから四年が経った頃に、手放すことを決めました」

そう言うと、クエイトはロジンカから目を離し、俺へ向き直った。

そして、ロジンカと同じ強さで、まっすぐに見つめてくる。


…ああ、似てるよ、ロジンカ。

お前は主人に、とてもよく似てる。


その優しさと、誠実さ。


「エルガ・ラルドスどの。この子をあなたのもとへやったのは、他でも無い、僕の意志だ」


…クエイトとは、実は長年の付き合いだった。

たまに手紙を送り合い、客と商売人になる。

そんな男の、いつになく真剣な言葉に、俺が耳を傾けない理由はなかった。



「どうか、この子がこれから悲しむことがないように、彼女を上手く愛してやれる人間のもとへ行けるよう、支えてやって欲しい」



迷いない、声だった。

クエイトは俺に頭を下げ、ロジンカの幸せの手助けをするよう頼んでくる。



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