若き店主と囚われの薔薇
「…あなたが名付けた、石の名のように。この娘はこれから、自分で運命を切り開き、進んでいくと思います」
クエイトの目が、見開かれる。
…ロジンカは、『届け屋になる』とはっきり言った。
きっとこのまま、俺の店にとどまっている気はないのだろう。
そういう、女だ。
こんな狭い場所で生涯を終えるような、そんな女じゃない、ロジンカは。
俺は、いつかにロジンカへ言ったように、クエイトを見つめて言った。
「私は、見ているだけです」
…奴隷として、この薄暗い世界を生きる、彼らを。
強く、強く生きようとする、彼女らを。
「…私が何かしなくとも、きっと。ロジンカは自分で、幸せを掴みますよ」
愛した人にもらった、名前を持って。
彼女はきっと、強く生きて行く。
まだ見ぬ誰かと出会い、笑い、泣き、その人のために歌をうたうだろう。
……少なくとも俺は、そう信じている。