若き店主と囚われの薔薇
「私、嫌だわ。エルガみたいなひと」
「そうか」
「友達いないでしょう、あなた」
「…だからなんだ」
そのとき、わずかに彼の眉間にシワがよった。
彼の表情を崩せたことが嬉しくて、私は笑う。
そして、もう一度エルガを見つめて、言った。
「なら、私が友達になってあげる」
……エルガ。
いつも私達には、自分の内側を見せないあなただけど。
これが、最後だから。
少しくらい、近づいてみてもいいでしょう?
精一杯に笑ってそう言った私に、エルガはとても驚いた顔をした。
けれど、すぐに彼は表情を変えて。
…それは今まで見たことがないほど、無邪気な笑顔だった。