若き店主と囚われの薔薇
見つけた、約束、運命の色
「…っ、早く、行かなきゃ…!」
賑やかな街の中を、私は人波をかき分けて走る。
早く、行かなければ。
『彼ら』に、追いつかなくなってしまう。
…やっと手に入った、明確な情報。
数年をかけて、地道に『彼ら』の情報を集めてきたけれど、具体的な現在位置がわかったのは、今回が初めてだ。
今朝、目撃情報を同業の人間に聞き、慌てて依頼所を出てきた。
今日は、ちょうど仕事がなかったから良かったものの。
…いや、あったとしても、私はそれを放り投げて、こちらへ向かっていただろう。
なんせこれは、私が生涯をかけて果たすと誓った、大切な約束なのだから。
長かった、ここまで。
何度も何度も挫けそうになったけれど、この約束があったからこそ、私はここまで生きてこれた。
胸元で揺れる、赤と翡翠の石を小さく握りしめる。
…もうすぐだ。
もうすぐ、『彼女』に渡すことができる。