若き店主と囚われの薔薇


私より少しだけ背の高いファナは、私の言葉に目を見開いた。


「…どうして、その名前を…」


彼女は、隣に立っている男と顔を見合わせる。

その男も、エルガが言っていた通りの人物だった。

明るい色の茶髪に、吸い込まれそうな深緑の瞳。

どことなく活発そうな印象の雰囲気に、私はなんだか笑ってしまいそうになった。

…ルト・サナウェル。

隣にいる碧色の『ジェイド』の、相棒の男。

やっと会えた。

やっと…やっと。


戸惑う彼女らに、私は小さく微笑んだ。

着ていたローブのフードを被り直し、姿勢を整える。

彼女をしっかり見据え、私は決まり文句を口にした。



「ファナ改め、ジェイド。エルガ・ラルドスより、あなたにお届けものです」



…彼女の橙の瞳が、大きく見開かれる。

信じられない、という面持ちで、ジェイドは口を開いた。



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