若き店主と囚われの薔薇
「…うそ。エルガ…?」
…覚えていた。
彼女もちゃんと、エルガのことを。
それが嬉しくて、私は笑顔で「はい」と頷いた。
首から下げている翡翠のペンダントを取り出そうとすると、深緑の彼…ルトが、驚いたように「え」と声を上げた。
「ジェイド、エルガって…?」
「…ルトが私を買った奴隷屋の、オーナー」
「…え、あ…ああ!あの人!」
思い出した思い出した!とルトが叫ぶ。
…本当に、明るいひとだ。
「…へぇ。あの店主から…なんの届けもの?」
私は、首元からペンダントを取り出した。
出てきた翡翠に、ジェイドが目を見張る。
「これです」
手を出して、と言うと、おずおずと白い手がこちらへ伸びてくる。
ペンダントをその手のひらに置く瞬間、エルガがインカローズを渡してくれたときを思い出した。
…エルガ。
エルガ、エルガ。
彼女の手のひらに翡翠が触れたとき、私の手が震えた。
手だけでなく、心の底から、震えるような感覚がした。