若き店主と囚われの薔薇
*
「エルガーっ」
おととい、届け屋が持ってきた手紙に目を通していると、奴隷の少年が俺の名前を呼んだ。
トタトタと小さく足音を立てて、俺の元へ駆け寄ってくる。
テントの入り口の近くに立った俺が持っている手紙を見上げて、少年は首を傾げた。
「だれから?」
朝のまぶしい光が、テントの中に射している。
俺は少し笑って、便せんを封筒の中にしまうと、「友達だ」と短く返した。
「友だち?エルガ、友だちがいるの?いいなあ」
「お前にも、いずれできる」
軽く頭を撫でてやると、少年は嬉しそうに目を細めた。
他の子供達は、外の井戸で顔を洗っているはずだ。