若き店主と囚われの薔薇
呼びに行こうと、テントの外へ一歩、足を踏み出す。
その時だった。
「エルガ・ラルドス」
目の前から、聞き覚えのある声がした。
最初に目に入ったのは、見慣れた届け屋のローブ。
見開いた俺の目に、肩上で切りそろえられた赤髪が映った。
「届け物が、あります」
宝石のような赤い瞳を細めて、彼女は笑った。
…野に根を張った、一輪の薔薇は。
今日もその強さで、美しく咲き誇っている。
Fin.