若き店主と囚われの薔薇
第一章
赤髪、店主、沈みゆくもの
彼女はいつだって、誇り高く咲いていた。
*
……ドサッ。
彼女が投げ込まれるようにテントへ入れられたのは、閉店間近の夕暮れ時だった。
「……っ、なにするのよ…!」
豪華なドレスに身を包んだ少女は、見事なまでに美しい赤毛をしている。
少女は自分を連れてきた正装姿のふたりの男を、キッと睨みつけた。
テントの入り口に立つ彼らは、少女の言葉には耳を傾けず、こちらを向いた。
「…金は、いらない。引き取ってくれ」
黙って様子を伺っていた俺は、「…かしこまりました」とだけ返事をする。
冷たい声で放たれた男の言葉に、少女は目を見開いた。
「…な、なに言ってるのよ!私はクエイト様のものよ!?早くお邸に帰して!」
しかし男が次に放った一言が、少女を黙らせた。
「……クエイト様の、ご命令だ」
少女の瞳が、これ以上ないほど見開かれる。
「………え?」
小さなその呟きが聞こえると、男達はテントから出て行く。