若き店主と囚われの薔薇
「………………」
眉を寄せて沈黙する子供達。
それを見て、赤髪の少女は信じられないと言わんばかりの顔をした。
「…友達だったんでしょう!?」
今度は子供達が、目を見開く。
…『友達』、か。
残念ながら、同じ奴隷屋で過ごす子供達は、お互いをそのような関係で認識したりはしない。
そもそも友達など、できた事の無い子供がほとんどだ。
彼らにとって互いは、『同じ奴隷屋で過ごす子供』。
それだけだった。
だから、戸惑っているのだろう。
思いもしなかった言葉で訴えられて。
もちろんそんな事情も知らない赤髪の彼女は、彼らが友達同士だと思い込んでいたのだ。
実際に、そう見えても仕方ないほどには、この奴隷屋の子供達は仲が良かった。
ただそれを、『友達』という名前の関係で呼ぶことすら、子供達には思いつかなかったのだ。
「…………」
またもや重い空気が広がり、俺はため息をつく。
パン、と一度手を叩いて、「悪いが」と言った。
「今はまだ、開店時間だ。言いたいことがあるなら、店を閉めてから言ってくれ」
俺の言葉に、赤髪の少女は罰の悪そうな顔をして、また座り込んだ。