若き店主と囚われの薔薇


それからの時間は、ずっと沈黙が続いていた。

訪れた客も、多くはなかった。


あっという間に日が暮れ、店じまいの時間になる。

俺がテントを閉めると、子供達が息をつく。

その様子を見て、赤髪の少女は眉を寄せた。

するとうつむいて、また何かを考え込み始める。

ぎゅ、と、ローブの膝下を握りしめた。


「…わ、たし…………」


か細い声が、テント内に響く。

少女は、これまで以上に思いつめた顔をしていた。


「…私……やっぱり、無理よ。ここでは…無理」


予想していたその言葉に、俺は冷めた目を向けた。


「出ていきたいなら、出て行けばいい。俺は止めない」


ただし、命の保証はしないが。

少女は俺の言葉を聞くと、さらに唇を噛み締めた。

「だって…嫌だもの。どこの誰かもわからないひとの奴隷になるなんて……怖いわ。耐えられない」

立ち上がると、そのままテントの入口へ歩いて行く。

またもや夜の闇へ飛び込もうとしているのだろう。



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